病院へ行っても、

香矢にはあわせてもらえなかった。

長い廊下にあるいすに腰をかけてるようにと指示を出され、

仕方なく待っていた。

香矢・・・

どうか、どうか、無事でいて・・・!


――待っている間、息苦しくて、胸がちぎれそうな思いだった。

だけど、それは私が息を吐いていなかったから。

人は、安心した時などに、ほっと息を吐くよね?

でも、私はそれができなかった。

落ち着けるわけもなく、ただただ待ち続けているだけ。

だから・・・

いつの間にか、過呼吸になっていた。

苦しい。

ずっと、息を吸い続ける。

怖くて、息が吐けない――・・・

だけど声を掛けて安心させてくれたのは、兄だった。


「お母さん、大丈夫。大丈夫だから・・・」


必死に声を掛けてくれ、私も少し落ち着きを取り戻した。


「お母さん、あのね。香矢、すごい血が出てた・・・でもね、救急車に運ばれる時、僕が“香矢”って呼んだんだ。そしたらね?香矢、“おにいちゃん”っていったんだよ?
だから、大丈夫。香矢は、大丈夫だから。泣かないで?」


「うん・・・うん・・・」


結城に答えようとしていたが、

涙で詰まって小さな声しか出てこなかった。

無事でいて・・・

どうか・・・・神様・・・・