『えと…朝倉向日葵です。里中さんと佐伯君と同じ中学から来ました。宜しくお願いします…』
―パチパチパチパチ
はーっ!終わった…。緊張したよ…。
ちょっというだけでもやっぱり大変…。
あ、次はさっきの彼の番だ。
そういえば…名前何て言うんだろ?
あたしより前の席って事は最初に“あ”が付くはずだよね?
そう思い前に視線を向けた。
「朝倉太陽です。特技はすぐ寝れる事です!でも起きるのは苦手なので遅刻するかもです!宜しくお願いしまーす!!」
同じ苗字だ!
…っていうか最初から遅刻宣言てどうなの!?
「おいおい…教師の前で堂々と遅刻宣言するなよ…」
先生も案の定呆れ顔だ。
「…ったく…。一応全員終わったな!次、明日の日程のプリント配るぞー。後ろに回せ」
前から回ってきたプリントを受け取ろうとすると、彼…朝倉太陽君が言った。
「同じ苗字だったんだ。宜しくね?朝倉向日葵さん?」
人懐っこそうにニッコリ笑いながら彼が言った時、ちょっとドキッとしてしまった……。
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馴れてきた高校生活。
新しい友達も出来て楽しい毎日!!
恋の予感?
そんなの無いよ!
あたしは家の事で忙しいんだから……。
***********
「向日葵~ご飯食べよう」
『うん!』
午前中の授業が終わり、りっちゃんがあたしの席の方にやってきた。
「あれ?龍之介君は?」
「授業終わって速攻で購買行ったわよ!限定の特製焼きそばパンが今日売ってるんだって」
呆れ顔でりっちゃんが言った。
「マジで!?混んでそう…。とりあえず俺も行ってくるわ」
「あ、じゃあ太陽!ついでにコーヒー買って来てくれない?」
「いーよ!向日葵ちゃんも何か飲む?」
『んーじゃあイチゴミルク買ってきてもらっても良いかな?』
「OK!じゃあ行ってくんね!」
そう言って小走りに教室を出て行った。
なんか爽やか~。
『「行ってらっしゃ~い」』
太陽君を見送り、先にお弁当を食べ始める事にした。
『いただきます』
「ねぇ、向日葵」
『ん?どうしたの?』
「ぶっちゃけ、太陽の事どう思ってるの?」
『え?どう思ってるって?』
何を急に?
「だ~か~ら!好きだったりする訳!?」
『好きって…えぇぇぇ~!!!!!』
思わず大きい声を出してしまい、周りから何事かと見られた。
恥ずかしい…。
「うるさいよ」
軽く眉間に皺を寄せてりっちゃんが言う。
『だってりっちゃんが急に変な事言うから!』
冷静に突っ込まれ、あたしは小声になりながらそう言った。
「だってさー向日葵が男子とそんなに早く親しくなるの珍しいじゃん。」
入学式の日の帰り、あたしの席に龍君がりっちゃんとあたしの席に来て前の席の太陽君に話しかけ、意気統合したのが始まりで、学校では4 人で行動する事が多くなった。
それから早、1ヶ月が経つ。
確かに今まであんまり男友達居なかったけど…。
今までは必要無かった…って言ったら変だけど、そんな機会も無かったし…。
好きとか…そういうの関係ないと思う。
『そういう機会が無かっただけだよ…』
「機会ね…。まぁ、あのヘタレ智也がくっついてればねぇ…」
『ヘタレって…りっちゃん…』
あたしは思わず苦笑する。
智也っていうのはあたしの小さい時からの幼なじみで中学からは龍君とりっちゃんと4人でいつも一緒に居たんだ。
「ヘタレよ。あいつは。で、あんたは高校入ったら積極的に?すぐに太陽と喋ってるし、下の名前で呼ぶんだもん、好きなのかと思うじゃない」
『そ、それは苗字が同じでややこしいから…!』
積極的とかじゃないよっ!!
「まぁ確かにややこしいけどね。」
『そうでしょ?それに兄弟達の世話でそれ所じゃないよ…』
「ふ~ん…。でも、好きな人とか出来たら教えてよね!」
『…出来たらね』
当分無いと思うけどね…。
――ガラガラ
「たっだいまー!特製焼きそばパンゲットだぜ!」
「よく、あんな人だかりの中入って行けるよな…」
そんな会話をしながら2人が帰って来た。
…っていうかゲットだぜって…。
「見ろよ!限定10個の特製焼きそばパンを5個もゲットしたぞ!」
「全部焼きそばパン!?あんたバカじゃないの!?」
自慢気に言った龍君に速攻でりっちゃんが突っ込んだ。
…5個も食べられるのかな?
「ひでぇ…。俺超頑張ってゲットしたのに…。しかも梨優のコーヒーまで買ってきたのに…」
「それとこれとは別だから。あんたあたしに恩きせる気?」
ジロッと龍くんを見るりっちゃん。
怖いよ…。
「いや…!そんなつもりは…」
龍くん焦ってるね…。
「じゃあ黙ってなさいよ」
「はい……」
りっちゃんに言われ、龍君は項垂れてる。
その横で、りっちゃんが悠々と缶コーヒー飲んでるし。
…凄いな~りっちゃん…。
…お嬢様みたい…いや、女王様か…。