奈央の家。




ワンルームで、必要最低限の物しか無い簡素な部屋。



部屋の隅には、亡くなった健君の写真が飾られていた。



私は、その写真を見て胸が痛んだ。




私はすっかり奈央が息子を亡くしていることを忘れていた。




きっと借金が無くなっても、奈央が心から幸せを感じることは無いだろう。




そう思いながらも私は、奈央にお金を渡した。




「本当にありがとう、美佳。」




涙ぐみ札束を握り締める奈央。




やっと、地獄から解放される・・。




そんな心境が伝わってきた。




でも、これで終わりでは無いのだ。




「今日、ご飯食べてってよ。」




奈央は、笑顔で台所に向かった。




その姿を複雑な心境で眺めていると、電話が鳴った。



相手は、先輩刑事からだ。



「はい、今一緒です。
はい、分かりました。」




私は、神妙な面持ちで電話を切った。