ターゲット1

神宮 奈央




中学時代のクラスメイト




彼女の笑顔は、道端の犬さえも振り向かせる。




そんな噂が立つほどの美少女。




人当たりのいい彼女の笑顔に騙され、痛い目をみた人間は、数えきれなかった。


私もその一人。




彼女には、今思えば軽い被害を受けたことがある。




「美佳!!」




親しげな表情で声をかけて来る奈央に私は、すぐに好感を持った。




いつも笑顔で近づいてくる彼女。




その笑顔に裏があるなんて思いもしなかった。




「ねぇ、美佳の好きな人って誰?」




この時私には、1年間片思いを続けていた男子が居た。




私もごく普通の中学生女子だったのだ。




彼女のことを信じていた私は、彼女に恋の相談までしてしまった。




それが、そもそも間違いだった。




数日後、彼女は、長谷川君と仲良く下校し始めた。




「美佳には、悪いと思ったけど、告白されて断れなくて。」




申し訳なさそうな表情で謝られると何も言えなかった。




アイドル並のルックスを持つ彼女。




彼女に取られるのは、仕方ないと思った。




今思えば、幼かった。




私は、必死で諦めた。




幼いながらに真剣に誰かを好きなったのだ。




私は、初めて誰かを思って泣いた。