「とりあえず、ブスは笑っとけ。じゃないと見れたもんじゃねぇ」

とアッキーはいい顔で笑う。

本当は分かってるんだ。

おじさんからの伝言なんて電話で事足りる。

だから……

きっと心配して顔を出してくれたアッキー。

なんだかんだ言って優しいアッキー。


なんでそのアッキーがソウリュウ君なのさ?

なんで他のヤツじゃないんだろう。

なんで──

「……なんでアッキーのオヤジ、ソウリュウって名前なんだよ」

普通なら答えようのないそんな私の呟きにアッキーはすぐさま返してきた。

「あ?それかぁ。……アイツ、“蒼竜桜(ソウリュウロウ)”をガクランの裏に刺繍してたんだとよ?んで皆にソウリュウって呼ばれてるってムーさんが言ってた。本名はマナブ。学ばないマナブ」

マナブ、この野郎。

そんな理由かよ……。

本名じゃねぇのかよぉ。

なんなの、この喪失感。

もうダメだぁ。

思考回路が全面停止した私は全身の力が抜けて瞼を閉じた。

「じゃ、またな」

頭上で網戸の閉まる音がする。

そして残されたスージーと私。

「……コンポ消してけよなぁ」

すっかり冷たくなった風が頬を撫でた。