ほりの深い綺麗な顔がふっと近づき、私の左耳に変な感覚が走る。

へ……?

一瞬で体の力が抜ける。

柑橘系の香りが鼻腔をくすぐり……

「離せ……」

重低音がそのまま耳元で響いた。

はにゃ?

「もう一度言う。離せ……」

フッ──

「ギャン!」

な……なんだ?

なんだ、なんだ?

今の感覚はなんだ!?

完全に口から離れてしまった赤髪の指達。

赤髪は救出した中指をさすりながら『……犬は耳に息吹きかけると噛むのを止めるってな……』と言う。

なにぃ?

犬だぁ?

上等じゃねぇか、ゴラァ~!

と目で言ってみた。

どう見てもヤツのが力も経験も上そうなので。