帰りのHRが終わるとアッキーが不機嫌なオーラを発して教室に入って来た。

そしてなぜか体は私に向いてるのに、視線は私の前の席のゴリラに注がれている。

……なんだよ、おい。

見上げると眉間にシワ寄せたアッキーの横顔。

「……タキ、今日ちょっと用事があって送ってやれないから」

……私、こっちですけど?

それ、ゴリラ中山ですけど?

「あ、なんだ。タキに言ってんの?タキはそっちだよ、黒田ボケたんじゃない?あ、俺シッコ」

「あ゛?」

どこまでも空気を読まない中山は完全に余計な事を口走り、アッキーを刺激するだけしてからガタガタと立ち上がり教室から消えて行った。

バカ野郎~。

“ナンパだ、ナンパだ、嬉しいな~。メガネもかけたし黒髪でぇぇ~~”

教室の外で中山のでたらめな歌が響いている。

……ぷ。

アッキーは『ゴリラめ……』と呟いて、空いた中山の椅子を跨ぐようにして座ると頬杖をつく私を覗き込んだ。

「ん?な、何?」

急に綺麗な顔がアップで視界に入ったせいでちょっと声がうわずる。

「……タキが行かないでって言ったら、行かない」

「……何言ってんの?」