ぬ~。

『違う、違う!』と騒ぐべきか?

『なんちゃって~』と笑うべきか?

『キャー、助けてぇ。脅されたわぁ』と助けを求めて、あっちのクラスメートの方に走り寄るべきか……?



もう一度教室を見渡して私は苦笑した。

もう手遅れかぁ。

フッ。

バカバカし。

どうも長年の習性はすぐには抜け切らない。

私、ここに何しにきたんだろう。

こんなド田舎にさぁ……。

ひとりでさぁ……。

あ、なんだか泣きたくなってきた。


──コトン。

私の机の右端に急に現れた古典の教科書。

高藤が『教科書まだないんだろ?……俺、寝るから』とダルさ全開な顔をする。

和風の綺麗な顔がゆっくりと瞼を閉じて机に倒れこむ。

「……ありがと」

そうだった。

私、ここではありのままでいいって決めたんだった。

ならば少しの間なんだし、こっち側の人でもいいかなぁ……。

私は小さくため息をつくと涙が引っ込むまで窓の外に視線を走らせた。