「で、なんで帰るんだよ?」

いつもみたいに笑わないアッキーはちょっと迫力がある。

その迫力に押され気味になって『テヘへ』と笑うとアッキーに目で殺された。マジでお手上げだ。

「あのね──」

「あ、やっぱいーや。てか、お前が聞け」

全てを話そうとした私を、いつのまにか靴を脱いでベッドをひらりと軽く飛び越えたアッキーが振り返る。

「俺、マジでお前が気になって仕方ねぇ。お前がなに考えて、なにを思ってんのか……。そんな事がすっげぇ気になる」

空耳なんじゃないかと思った。『実はお前ムカつく』って言われてんじゃないかって思ってしまう。だって見事な眉間のシワといい、眼力といい、セリフとまるで合ってないから。

けど──

「……なんで?」

「……なんでも」

強引に右手を引っ張られベッドから立ち上がった私がたどり着いたのは、柑橘系の香りの漂う広い胸だったからやっぱり『気になって仕方ねぇ』なのだ。

コイツの中にはまだきっとミサキが居て。私がどれほどコイツの中にいるかなんて分かんないけど。

けど“すっげぇ気になる”に胸が跳ね上がってしまう単純な私。