「泣いてんじゃねぇよ」

感傷的な私に降ってきたどうしようもないこのセリフ。

「……泣いてないし」

「あ、ライター見っけ。……てか、まるで俺がお前に意地悪して泣かしたみたいだろうがッ」

「誰も見てないじゃんよ!」

「お前、田舎なめんなよ。その辺の障子や壁の隙間から──」

キャー、とワザとらしい叫び声をあげ、アッキーは“ムンクの叫び”の如く両手を頬に当てる。

その口にはやっと火がついた煙草。

「……似てないよ?」

「似ててたまるか!!……とにかくッ!信じらんないトコから見てんだよ!んで明日になったら向かいのトシ婆ちゃんに『黒田の息子が真っ赤な女の子泣かしとったぞ?また悪さか!!おしりペンペンしてやれ』とか言われちゃうんだぜ?」

「……んで本当にペンペンされんの?」

「ペンペンどこじゃねぇよ。親父が聞いたらボコスカだ」

……ぷ。

吹き出した私に『マコの見舞い行くぞ』とシルバーのヘルメットが飛んできた。