カチリと鉛色のジッポを取り出すと晴海先輩は煙草に火を付け、ゆったりと煙を吐いた。

小さな沈黙が話の終わりを告げた。

「……タキ、マコの病室行くか?」

と今まで黙っていた中山が急に振り返る。

先輩が恐いからってあんな賭けにのった中山のバカ野郎が!!

国民栄誉賞モンの大立ち回りのチャンスをパーフェクトスルーしたおたんこナスがッ!!

心なしかいつもより優しそうな声に思わず『うん』なんて答えたくなっちゃうけど。

そんな声出したってもう信用なんかするもんか。


しかもこんな話聞いて、アッキーと高藤とミサキの集う病室なんて行ったら酸欠で死ぬに違いない。

「行かないけど降りる」

飛び込み参加待ってるぞ、と隣からの楽しそうな声に眉をしかめる。

「晴海先輩、こんな事していつか誰かに刺されますよ?」

精一杯の私の嫌味に晴海先輩は『ならば、せめて相打ちにしてやるよ』と口角を不気味に上げ、テルさんがまたゲラゲラと笑った。

やっぱ頭おかしい。

私は急いで車を降りて、力いっぱいドアを閉めた。