さっきから私の存在感ゼロ。

てか……

高藤の超プライベートでスクープ的な内容の会話を私なんかが聞いてていいッスか?

密かにそんな疑問を抱え始めた私。

でも相変わらず透明人間みたいな自分になす術もなく。

……帰りたい、と窓の外の景色に視線をずらした。

「ああ、面倒くせぇな。ってかまだミサキにタケルの話してねぇの?」
「マコにそれが出来ると思います?あの臆病狼に?」

……ゴリ……ラ?

中山?

高藤をサラッと“臆病狼”と言い切った中山の黄色い後頭部を凝視してしまった。

だって中山がそんな風に高藤を例えるなんてさ……。

それは小さなショックで、ゆらゆらとした黄色が急に遠くに感じた瞬間だった。

なのにまるでこの車の中の空気は変わる事なく緩やかで。

いつも中山はこんな事言ってんのかなって悲しくなった。