長めの黒い前髪の間から覗く目はかなりきつめで、浅黒い肌といいその有無を言わせない雰囲気といい、高校生にはまるで見えない。

さらにその後ろに立つ坊主頭の人なんてガタイ良すぎだし、顔もおっさんみたいだし、絶対にハタチ越えして見える。

どちらかと言えば制服着てるのがおかしいんじゃ?

ああ、……関わり合いたくない。

だから、見なかったことにして目をスイッと逸らした。

「……シカトしてんじゃねぇよ」

いきなり作戦失敗。

「黒田がお前を送ってくれって言ってた。今すぐ来い」

「……え?」

い?今ですか?

今の今?

四限中の今ですかぁ?

「……乗りたくないなら」

あ、そう言ってくれるならばもちろん

「乗らな──」

「担いで乗せるだけだけどな」

「あ、歩いて行けまーす」

気がついたら、スポーツ大会の選手宣誓顔負けな程に右腕を耳の横にピッタリ付けて真上に掲げていた。

脊髄反射、恐ろしい。

早く来いよ、と歩き出した黒髪の男はたぶんあの有名な噂の“晴海先輩”。