「……て言うか、あんた浦ヶ崎大好きって言ったじゃない」

ああん?

「いつよ?」

「……三歳、いや五歳頃だったかな。覚えてないの?」

「……」

普通は覚えてねぇ。

いや、マユミさんこそ娘の年齢忘れんな。

そっちを忘れないで欲しかったよ。

『あ、たぶんヒーちゃんの葬式の時だ』と呟くマユミさん。

……ヒーちゃんって誰?

浦ヶ崎の事はまるで分からない私。

なぜなら私達は葬式の時しか浦ヶ崎に行かないから。

だから人の名前もまるで分からない。

そして帰省する度にあの街には住めないと私は実感してしまうのだ。

そんな私が浦ヶ崎……?

一人で?

嘘でしょ?