「野球、続けたいです」
先生を真っ直ぐに見て、俺は答えた。
すると先生は、ニヤリと笑みを浮かべ、こう言った。
「もしかして、野球が続けられなくなるかも…なんて思った?」
「少しだけ…」
そんな先生とは対照的に、俺は苦笑いを浮かべる。
先生は、俺を試していたようだ。
「大丈夫だよ。ヒビ程度なら、安静にしてればすぐに回復する。有貴くんは若いからね!しばらく右肩は上がらないとは思うけど、まぁ慌てずに」
先生の言葉に、俺だけじゃなく、母や兄貴も安堵の笑みを漏らしていた。
兄貴の笑みなんて信用ならないけど。
「ただ、背骨が厄介なんだよね…。起き上がれるようになるまで、もう2、3日ってところかな」
「いつまで入院するんですか?」
「1週間。次の日曜日に退院。退院後は、週2でリハビリに来てね」
「わかりました…」
リハビリ、かぁ。
今まで肘とか壊したことが無かったから皆無だ。
辛いのかな?
「リハビリは、そーんなに大変じゃないよ。筋トレ感覚で出来ると思う。受験勉強の気分転換に、お友達と来てもいいからね」
にっこり微笑む先生。
さっきから、考えを見透かされてばっかりだ。
この人、少し恐ろしい。
恋人だけど、流羽を連れて来ようかな。
それとも、筋トレとかに詳しそうな三浦を誘おうか。
…いや、妬かれるといけないから、やっぱり流羽と来よう。