母が先生に会ってくると言い病室を出ると、兄貴がベッドの横の椅子に腰を下ろした。
「有貴、身体は平気か?意識無かったんだって?」
そう言って、俺の顔をじいっと覗き込む兄貴。
「平気だったら入院なんてしてない」
兄貴の視線が嫌で、顔を背けた。
「それもそっか!ははは」
笑っている兄貴が怖い。
また…何かされるんじゃないかって。
動けない身体をいいことに何か…また…
「有貴、お医者さんよ」
母が、先生と一緒に病室へ戻って来た。
「どうも、外科の村山と申します」
「宜しくお願いします…」
村山先生は、若くて整った顔立ちをしたお医者さんだった。
俺に向けるその表情は柔和で、初対面で紳士的な印象を憶えた。