「よぉ、久しぶり!」

「兄貴…っ」


ずかずかと病室に入って行く兄貴。

少し遅れて、母もやって来た。


「母さん、何で兄貴なんか連れてきたの…」

「何言ってるの。智騎くんったら、有貴のことが心配で、わざわざ始発に乗って駆け付けて来たのよ?」

「でもさぁ…」


病室の中が珍しいのか、きょろきょろと中を歩き回る兄貴に、溜め息が零れる。


俺は、兄貴が苦手だ。


今年大学生になったばかりの兄貴は、家を出て大学近くの寮で一人暮らしをしている。

両親は、兄貴が一人暮らしを始めると言った時、とても寂しそうにしていたけれど、俺にとっては喜ばしい限りだった。

もう、あんな思いをせずに済むのだから。