「行かな…いで、ずっと手ぇ…握ってて…」
「うん。行かない、行かないから…」
俺はその愛おしい手を、大切に、壊れないように、優しく握り締めた。
「有貴…」
どこまでも黒い瞳の奥を見つめ、俺はその名を口にした。
「何…?」
「好きだ、愛してる」
「………え?」
「好きなんだ、誰よりも、有貴が好き」
いつの間にか、零れていた本音。
すうっと心が軽くなっていく。
今の状況が信じられないのか、目を泳がす有貴が可愛い。
いつも俺に可愛いと言うけれど、本当は有貴が1番可愛いんだよ。
それを自覚させてやる為、俺は有貴の唇に、キスを落とした。
そしてその口で、赤く染まる耳に囁く。
「有貴、可愛いな…」
と、吐息を交えて。
「狡い…、俺が動けないからって流羽ばっかり…」
眉をしかめ、口を尖らせているけれど、有貴の頬は熟れた林檎のように赤い。
「だって好きなんだもん」
そう言う俺は今、きっと、最高でとびっきりの笑顔。
「俺も…好きだ」
見つめ合い、再び引き寄せられるようにして、触れるだけのキスを何度も何度も交わした。