「有貴…」


何度その名を呼んだのだろう。


運動会が終わってすぐに、有貴が運ばれた病院へ向かった。


なんで、あの時そこにいたのが有貴だったんだよ…


俺は、こうさせた神様を本気で恨んだ。

神様は、俺達の味方だと思っていたけれど、それは思い違いのようだ。


本当は、俺がこうなっていたのかもしれないのに。

有貴じゃなくて、俺がこうなればよかったのに。


身代わりになってくれるのなら、見知らぬ人の方がよっぽど楽。

それが、よりによって愛する彼だなんて、一体何の戒めなのだ。

出来ることなら、有貴の身体と代わってやりたい。

そうすることで、少しでも有貴を楽にしてやりたい。


どうか、どうか…

有貴を…助けて下さい。


祈るようにして、両手で有貴の掌を包み込んだ。