救護係の俺は、テントの下でぼうっと競技の様子を見つめていた。
今は、女子の騎馬戦。
学年混合で行われる為、下剋上があってなかなか見応えのある競技だ。
その騎馬の中で、群を抜いて強い騎馬が1つ。
城崎さん率いる騎馬だ。
普段は大人しいくせして、勝負事とかにはめっぽうアツいんだから。
そんな城崎さんを目で追ってしまう。
そして思わず、笑みが零れる。
それにしても、怪我人が全く出ないものだから、救護所は酷く退屈していた。
怪我人が出ないことは、喜ばしいことなのだけれど。
退屈しのぎに、入場待ちの奴等と絡もうと思い、俺は席を立った。
途中、器具庫の横を通る。
マットや棒高跳びの棒、コーンなどが無造作に積み重ねられていた。
その横では下級生が走り回っていて、危ないなぁと思いつつ。
そんな時だった。
小走りの流羽の後ろで、香坂さんが下級生と勢い良く衝突してしまったのは。
「あっ、ごめんなさい…」
向こうからぶつかって来たのに、香坂さんが謝っていた。
その理不尽な様子に少し腹が立つ。
「柚里……危ないっ!」
流羽の声が響いた。
何が危ないって、積み重ねられた器具がぐらぐらと揺れていて、その下には香坂さんが。
さっきぶつかった時に、香坂さんの背中が器具に当たっていた。
恐らくその衝撃で…
流羽が香坂さんのもとへ駆け出したのと同時に、俺も走り出した。