群がる人達の間を掻き分けて、人の少ない救護所の近くへと向かう。

あんまり騒がないで見る分には、何も言われないだろう、多分。


「あっ、ごめんなさい…」


すれ違いざまに駆け回る男子生徒と肩をぶつけた柚里が、バランスを崩して体育倉庫の方へ倒れる。

柚里が倒れていく方向には、たくさんの器具が無造作に積まれている。


「柚里……危ないっ!」


急いで柚里の方へ駆け寄り、身体を覆い被すようにして、ぎゅっと抱き締めた。


「………キャアーッ!」


高く積まれた器具が上からガラガラと音を立てて崩れ落ちていった。


「………っ、あれ?どこも痛くない…」


隣には落下物が転がっているのに、一体何故…


「流羽、香坂さん…怪我は…無い?」


上から声が降る。


「…ゆ、き…?」


身体に重さを感じたのは、有貴が俺と柚里に覆い被さっていたからだった。


「流羽くんに、小泉くんまで…ごめんなさい…」


身体を起こした柚里が、今にも泣きそうな瞳をちらつかせながら言った。


「柚里は悪くないよ…」


柚里が安心出来るように、優しく頭を撫でる。


「2人共…無事で……よかっ……」


眉を寄せて笑い、そう言いかけると、有貴が地面に倒れ込んだ。


「…有貴!?おいっ、有貴ってば!」


いくら呼び掛けても、有貴は目を閉じたまま、動かなかった。