「…えっ?今、何て…」
「幸村くんも好きなんでしょ、小泉のこと」
優しい瞳で俺を見て、三浦は言う。
こいつには、全部お見通しって訳か。
「そうだよ。俺は有貴が好きだ」
「告白は、した?」
「…まだ、だけど。でも、絶対にこの口で有貴に伝える」
「頑張って、幸村くん。じゃあ、俺は次の短距離に出るからさ。またね」
俺の肩をポンッと軽く叩いて、三浦は去って行った。
小走りで入場門へ向かう三浦の背中から目が離せず、その場に立ち尽くす。
去り際の三浦の横顔が、脳裏に焼き付いている。
笑っていたけど、切なさを感じさせる三浦の目。
俺の恋は、いろんな人の想いの犠牲の上で、初めて成り立っているものなんだと思った。
「流羽くん、お疲れ様!」
クラスの応援席へ戻ると、真っ先に柚里が声を掛けてくれた。
「ありがとう。俺、1位取ったぞ!」
「うん。小泉くんとの息ぴったりだったね!」
純粋に俺の恋を応援してくれる柚里の笑顔が、心に滲みる。
「今ね、城崎さんが騎馬戦に出てるの」
柚里は背伸びをしながら、騎馬の上に跨がる城崎を指差した。
応援席の前の方にはたくさんの人が群がっていて、少し見にくいと感じた。
「マジで?ここ、ちょっと見にくくないか?場所移動しない?」
「うん。そうしよっか」