競技を終えた俺は、係の仕事があるという有貴と途中で別れ、クラスの席へ向かった。
その刹那
「幸村くーん!」
と、俺を呼ぶ声がした。
振り返ると、そこには顔の筋肉をだるんだるんに緩めた三浦が立っていた。
「見たぞっ、障害物競争!あれは小泉も、競技云々より理性との闘いだったと思うな」
腕を組み、1人頷きながら話す三浦。
「理性って…あのパン食いの時の俺って、そんなに危ない表情だったか?がむしゃらに飛び付いてたから変だったと思うんだけど…」
「幸村くんは無自覚だから質が悪いんだよね。あれはもう、男に興味が無くても凝視しちゃう勢い。…って何言ってんだろ、俺」
三浦は、かっかっかと笑い飛ばす。
「そっか…。あ、三浦B組のリレーのアンカーだろ?今日は宜しくな」
俺は言った。
既に引退したとはいえ、三浦は元野球部キャプテン。
勝てるかどうかはわからないけど、全力で挑もうと思う。
「幸村くんもアンカーなんだよね?今日は、宜しく。ついでと言っちゃなんだけど…小泉のこともね」