俺の勝手な思い違いかもしれないけれど、俺達は驚くほど息がぴったりで、前には誰1人見えなかった。
「パン、取れないんだけどっ」
残る障害物は、パン食いのみ。
とうにパンを手に入れた有貴の横で、俺は未だに、ぶら下がるパンとの格闘を続けていた。
俺がもたもたとしている間に、後ろから続々と他のペアがやって来る。
「ごめん、すぐ終わらせるからっ!」
「ゆっくりで平気だよ。つか、流羽ったらそんなに一生懸命パンに飛び付いちゃって…あんま顔火照らすなよ?結構腰にくるから」
そう言って、爽やかに笑う有貴。
その言葉に全身に流れる血が逆流を始めると同時に、変な汗が噴き出すのを感じた。
パンに飛び付く俺を、そんな目で見られているのを自覚した瞬間、とてつもない恥ずかしさに刈られた。
「こっち、見んな…っ!こんなの、すぐに終わらせて…っ」
有貴の視線を気にしつつ、もう1度パンに飛び付けば見事、パンをくわえることに成功した。
「やっふぁ!はわふごーふいふふぉ!」
「パンくわえながら何言ってるかわかんないけど、とりあえず可愛いわ。行けるか?」
俺は精一杯頷いて答え、有貴の掛け声と共に、足を前へと踏み出した。
そして、無事に1着でゴール。
もう少し遅かったら、追い抜かれるところだった。
「やったな!お疲れ!」
「お疲れ!楽しかったよ、有貴!」
トラックの真ん中、足は繋がれたまま、そこに腰を下ろす。
青い空の下、ハイタッチの乾いた音がグラウンドに鳴り響いた。