「ねぇ、本当にゆーちゃん幸村と別れたの?未だに信じられないんだけど…」


選手決めで騒がしい教室の傍ら、城崎さんが私にそう言った。


「本当に流羽くんとは只のお友達だよ?」


流羽くんは、別れた後も今までと変わらずに接してくれた。

失恋した筈なのに、不思議と辛くはなかった。

きっと、流羽くんの優しさのおかげなんだと思う。


「そっか。でも信じられないなぁ…。まぁ、それは置いといて、幸村って最近女々しくない?」


そう言う城崎さんの視線を辿れば、小泉くんと楽しそうに話す流羽くんがいた。


あっ、頭叩かれてる。

結構痛そう…。

だけど嬉しそう。

流羽くん、鼻の下伸びてるよ!


次から次へと移り変わる流羽くんの表情が面白い。

見ていて自然と笑みが零れてしまう。


「それでね…って、ゆーちゃん話聞いてる!?」

「ごめんごめん!で、何の話だっけ?」

「幸村が女々しくなるのって、有貴くんの前限定だなってね!」


冗談だよと言わんばかりに笑いを交えながら言っていた城崎さん。

まさかそれには深い意味があると言える訳もなく、私は苦笑いを浮かべるしかなかった。