「一緒に頑張ろうな、リレーも障害物も」


狼狽する俺に、有貴が声を掛けてくれた。


「有貴…?有貴も一緒なのか…?」

「俺、我が儘言っちゃったかなって思ったけど…流羽が引き受けてくれてよかった」


俺の左斜め前の席で、安堵の表情を見せる有貴。


「ごめん。俺、上の空でよくわかんないまま頷いちゃったんだよね。でも、有貴が一緒なら…」

「俺が…一緒なら…?」

「いやっ、一緒に頑張ろうなってだけ!リレーと、障害物競争だっけ?」


危ない危ない。

こんな大勢の前で、本音を漏らしそうになってしまった。

まったく、心臓に悪い。

いちいち煩く鳴る心臓が悔やまれる。

寿命、縮んだりなんかしていないだろうか。


「そうだよ。障害物は、俺と流羽でペア組んで、リレーでは俺が流羽にバトン渡すの」

「マジかー!わぁやべぇ超楽しみなんだけど…あ、有貴ちょっと俺の頭叩いてみてよ!」


席を立ち俺の横に移動した有貴は、にっこりと微笑むと、右手を大きく上げ、それを俺の頭目掛けて振り落とした。


「……っ、いってぇ!」


わかってはいたけれど…容赦無いな、有貴。

目が輝いてた…。

ドSか、あいつは!

でも、痛いってことは夢じゃないんだ。

やっぱり嬉しいかも。


「流羽可愛い。俺にぶたれて鼻の下伸びてるよ」

「…ちょっ、見んなっ!」


満面の笑みの有貴に指摘された俺は、恥ずかしさのあまり机に突っ伏した。