「……え、今…何て?」


その大きな瞳は、更に大きさを増す。

瞠目する柚里をよそに、俺は言葉を続けた。


「別れよう。今日で俺達、恋人でいるのやめよう」

「…なっ、何で!?私に悪いところがあったなら、ちゃんと直すよ?流羽くんの理想の女の子になれるように頑張るよ?」


ブランコから立ち上がった柚里が、俺の両腕を掴んで訴える。

そんな柚里の頭をくしゃりと撫で、俺の胸に寄せた。


「柚里は、充分すぎるぐらい、俺の理想のお姫様だよ…」

「それなら…どうして?私…嫌だよっ、流羽くんと別れたくないよ…」


俺の胸に顔を埋めたままの柚里の肩は、小さく小刻みに揺れている。


「俺ね、好きな人がいるんだ。…ずっと、その気持ちに気付かないふりしてて、曖昧な気持ちのまま柚里と付き合い始めちゃって…」

「私のこと、好きって言ってくれてたのは…嘘だったの?」


大粒の涙が、柚里の頬を幾度と無く伝う。

そんな涙を、指で拭ってやる。


「柚里のことは、今も昔もずっと好きなんだ。だけど、いつの間にか好きの意味が変わってた。それに気付くのが遅くなって…こんな風に柚里を傷付けて…本当に、ごめん」