それは今も同じ。

今の柚里が、あの時の有貴と重なってしまう。

いや、俺が故意に重ねているのか。

そんなの言い訳じゃんって思われるかも知れないけれど、兎にも角も、俺の気持ちとは裏腹な、相手のその表情に弱いみたいで。


「流羽くん、一緒に2人乗りしよ?」

「おっ、懐かしいな!いいぜ、俺が立つよ!」


己の感情を圧し殺し、俺も笑顔を見せた。

上手く笑えていた自信など皆無。

柚里に跨がるようにして、ブランコに足を乗せる。


「行くよっ」


俺の顔を見てそう言うと、柚里は地面を強く蹴り上げた。

ブランコの2人乗りなんて何年ぶりだろう。

夏特有の湿っぽい風が、爽やかに感じられた。

そんな風に、心の中の余計なものが洗い流された気がした。

はっきりしない俺に、痺れを切らした神様がくれた風なのだろう、きっと。


今なら、伝えられる気がする。

むしろ、今しかない。


揺れが徐々に小さくなっていくブランコから足を下ろして、柚里の前に立つ。


「大事な、話があるんだ」

「何?」


いつだって柚里は、真っ直ぐに俺の目を見つめて話を聞く。

だから俺も、柚里のその澄んだ瞳をしっかりと見つめて話そう。


「俺達、別れよう」