夕暮れ時、オレンジ色に霞む空。

近くの公園をなんとなく歩けば、生暖かい風が頬を撫でる。

大分歩き、悲鳴をあげる足の裏を労るように、俺と柚里は、ブランコに腰を下ろした。

楽しかったとはいえ、肉体的に疲れたのか、次第に口数が減っていく。

本当の想いを告げるなら、きっと今のタイミングなんだろうけれど…


「あの……ゆっ」

「流羽くん流羽くん!」

「なっ…、何!?」


俺に向かって、笑顔で手招きをする柚里。


あぁ…駄目だ。

どうしてそんなに笑顔なの?

そんな顔すんなよ…

言えなくなっちまうじゃんか。


この気持ちには、覚えがあった。

いつか有貴にもこんな感情を抱いていたことがある。

あの時の俺はまだ、自分の気持ちを否定していた。


『俺を諦めろ。辛いだけなんだから…』


辛いだけ、辛いだけな筈なのに。

好きな人が、自分以外のヤツに愛しげな瞳を寄せるって…その覚悟以上に辛いことなのに。

俺と一緒にいる時の有貴、すごく幸せそうで…

その幸せが、時折見せる笑顔から止めどなく溢れていた。