『デート…!?嬉しい!明日だよね、私すごい楽しみ』
受話器越しに感じる柚里がとても嬉しそうなのが、声や話し方でわかった。
「じゃあ、10時ぐらいに柚里ん家迎えに行くよ。映画観て、飯食って、買い物して、明日は楽しもうな!」
『うん!楽しもうね!』
「おう。また明日な」
『待って…っ!』
「ん…?何?」
『大好きだよ、流羽くんのこと』
「………ありがと」
返す言葉がなかなか見つからず、只一言「ありがと」と返した。
もう、やたらむやみに“好き”とは言えない。
俺の“好き”と柚里の“好き”は、違うのだから。
『…じゃあ、バイバイ』
「またな」
そう言って耳から携帯を離し、切った。
………柚里、好きだよ。
言葉に出来ない代わりに、心の中で小さく呟いた。
窓から差し込む日差しは、ギラギラと輝いていて、そんな日差しが部屋中を照らす。
ふと窓から顔を出せば、真っ青な空の上に向かい、ぐんぐんと伸びる入道雲。
夏休みは、佳境に差し掛かろうとしていた。