駅までの道のり、西に傾きかけた太陽の日差しで影が伸びる。


「いろいろ…ありがとな」

「えっ?何が?」

「その…流羽のお陰で、いろいろ踏ん切りが付いたというか」


よくわからないけれど、ここは黙って有貴の話に耳を傾けた。


「三浦との関係、昨日でやめにした。あれから、本当の気持ちをちゃんと伝えたんだ。三浦ね、最後まで優しかった…」

「そっか。良かったな、有貴」

俺はすごくホッとした。

よかった。

有貴、めっちゃ辛そうだったから…

心につっかえてたもの、取れてよかったな。

そう、安堵したのと同時に、三浦にも感謝した。

三浦が優しくしてくれたから、今の有貴は前と変わらずにいられる形になったんだと思う。

有貴に惚れたのが、三浦でよかった。


「俺、流羽のこと諦めないから。流羽のこと、好きで居続けるから」


昔、城崎に向けられていた熱を帯びた瞳。

その瞳に更に熱が帯びられて、今それは、俺に向けられている。


「少しだけ、時間をくれないか?」

「……時間?」

「あぁ。俺、必ず答え出すよ。それまで、少しだけ待ってて」

「わかった…」


有貴は、俺に真剣に向き合っているんだ。

だから俺も、真剣に向き合おう。

答えはもう出ている。

それまで少しだけ…もう少しだけ、待っていて。