「もうすぐ4時だよ。そろそろ出た方がいいんじゃない?」
時間を確認する佳苗。
その表情は、ちょっぴり寂しそうに見えた。
「そうだなー。そろそろ帰るよ。有貴も一緒に帰るよな?」
「おう。佳苗さん、今日はありがとうございました」
「こちらこそ!有貴くんが来てくれてお店の女の子ウケがすごかったし、何よりあたしが楽しかった!」
佳苗の両手に包まれる有貴の手。
佳苗に微笑まれ、有貴も微笑みを投げ掛ける。
その雰囲気はまるで、城崎と付き合っていた時のようだった。
有貴と一緒にいるだけで、全身から幸せなオーラを放っていた城崎。
そんな城崎を、美しく光る黒の瞳で見つめる有貴。
その瞳には、常に熱が帯びられていた。
「じゃあな、佳苗!多分来年も来るから」
「はいはい。どうせ来るなら必ず有貴くん連れてきなさいよ!」
去り際まで冷たい佳苗に苦笑いが零れる。
まぁ、こんなやり取りも従姉だから故なのかもしれない。
「有貴くんはいつでも大歓迎だから!いっそのこと、家に住んでもいいんだからねー?」
全身を使って大きく手を振る佳苗が少し可愛く見えたのは、言わないでおこう。