「荷物持って来たぞー」
「流羽ごめん。それ大分重いだろ、俺が持つよ」
有貴が席を立って駆け寄って来た。
「平気平気。つか有貴の軽いじゃん。俺の重いよ?持つか?」
「うん、持ってみる」
白くすらりとした指先が伸びる。
「ひぃやぁぁっ!」
そんな有貴の指先が、不意に俺の手に触れ、奇声を発してしまった。
ただ触れただけなのに、何故か恥ずかしくて、嬉しくて…
意識した途端、これだ。
まるで恋する乙女じゃないか。
そう思うと、触れられたことよりも、乙女思考の自分に羞恥を感じてきた。
「どうした?…俺、何か変なことしたっけ?」
「いや!何にも無いです!元気です!」
「そう…?あっ、流羽の荷物重っ!」
荷物が重いだけなのに何故か笑う有貴を見て、俺まで笑ってしまった。
何が面白いとか、何が楽しいとか、そういう理屈とかじゃなくて、有貴が笑ったから、俺も笑う。
純粋にそれだけだ。
恋って、こういうことなんだろ?