枕元の携帯が、目覚めの音楽を流す。
しかしその曲は、あらかじめ設定しておいたアラーム音ではなく、着信を報せるものだった。
「はい…もしもし…」
手探りで携帯を手繰り寄せて電話に出るが、寝起きの為、声がまだ寝ている。
『俺だよ、有貴。ごめん、起こしちゃった?』
電話の主は、有貴だった。
「んー…平気。で、何?」
『流羽さ、今日も海の家にいるの?』
「今日の昼まで手伝って、夜になったら帰る…」
『あの、さ。俺も一緒に手伝っていい?』
「………いいけど…」
『じゃあ、もう少ししたら行くわ。ホテル出る時にメールする』
「三浦は来んの?」
『あいつは俺と一緒にホテル出るけど、そのまま家に帰るって。だから俺1人で行くから』
「わかった。また後でなー…」
『じゃあなー』
その有貴の声を聞いて、電話を切った。
恋人からのモーニングコールみたいだったな、と寝起きの働かない脳で思った。
昨日、ずっともやもやしていた気持ちにようやく決着が付き、認めてしまえば心がすごく軽くなった気がした。
俺が本当に好きだったのは有貴だったんだ。
それはきっと、あの誕生日の時から。