敢えて、冷たく三浦をあしらうことで、俺に対して痺れを切らしてくれるのを期待した。

どんなに冷たい言葉が降ってきても、それに対する覚悟はちゃんと出来ていた…筈なのに。


「そっか…そうだったんだ…」


三浦は切なく笑うだけだった。


「俺を…責めないのか?」

「小泉が辛い思いしてる時に、俺ばっかり幸せな思いして、ごめんな?」


切ないけれど、どこか満ち足りたような…

三浦はそんな表情を見せながら、俺の頭を優しく撫でた。


「なんで…っ、優しくするんだよ…」


予想外の反応に、困惑してしまう。

そんなに優しくされたら…また、その優しさに甘えちゃうじゃん…


「例え利用されても、その言葉が嘘で塗り固められたものだったとしても、相手が好きな人だったら、それでも愛おしくて堪らないんだよ…?」


そう言って三浦は、俺の前で今までで1番の笑顔を見せた。

俺はその全てを包み込む笑顔に、酷く安心してしまった。


「こんな俺を、好きになってくれて…ありがとう」

「それはこっちの台詞だ。少しの間でも、小泉の恋人でいられて、すごく幸せだったよ」


最後まで、三浦は優しかった。

俺と三浦の関係は、恋人から友達へ逆戻りする形になったけれど、その夜だけは三浦の温もりに包まれて眠りに就いた。