注文を出したのは、有貴だった。
その向かいには三浦が。
野球部コンビだ。
いかにもスポーツやってますな身体の三浦とは対照的に、筋肉は付いているが、割りに細く白い肌の有貴。
2人共、男の俺から見ても充分すぎる程にカッコいいのだが。
その証拠に、周りの女性達の視線が、2人に注がれている。
「2人仲良く海か!」
有貴と三浦が付き合っているのでは、と考えていたけれど、それに確信を持てずにいた。
有貴も三浦も、周囲にそんな素振りを見せることは無い。
「…うん、まぁ。流羽は?香坂さんと一緒じゃないのか?」
「俺はこの店の手伝い。柚里は一緒じゃねぇよ」
「幸村くんみたいな子が働いてたら、逆ナンされまくりだな!」
三浦が爽やかに言った。
この男、本当に海が似合うな。
白い歯がキラリと輝いている。
「逆ナンは嬉しいけど、俺には柚里がいるからなー」
「やっぱり逆ナンされるんだ!」
「はは…じゃあ、俺は仕事戻るから!」
2人の席を離れ、仕事に戻った。
有貴と三浦、本当に仲が良いんだな…
柚里と付き合い始めてから有貴は俺に迫って来なくなったし。
混雑する海の家の中。
少し離れている所からでも迷わずに有貴を見つけられた。
楽しそうだけど、何か物足りなさそうな…俺には有貴がそんな風に見えた。
心、ここに在らず…
一言で表せば、正にそんな感じだった。