「…俺は流羽が好き、ただそれだけだ」


いくら真剣な眼差しで言われても、それじゃあわからないし、伝わらない。

それでも有貴は、言葉を続ける。


「ねぇ、さっきの流羽の言葉…俺、プラスに捉えてもいいの?」


押さえ付ける手に、一層力が込められた。


「いっ、痛い…っ」


その痛みに、思わず眉が八の字に寄る。


「知りたいんだろ?俺のこと…」


熱く甘い吐息が耳に降り注ぐ。


「や…っ、だぁ」


脱ぎかけの、前が大きくはだけたワイシャツの隙間から、細く綺麗に伸びた指が忍び込んでいく。


嫌な筈なのに、抵抗しようとしない身体を恨んだ。


そんな時、聞き慣れたクラスメイトの声が廊下に鳴り響いた。


「…流羽の首筋、わざと見えるところに付けといたから。わかるヤツにはわかる…」


そう言って、有貴は身を退いた。

さっき噛まれたところは赤く、小さな傷痕のように首筋に刻み込まれていた。

けれど、この傷の示す意味がわからなかった。


「おい、有貴が抜けたから俺達のチームボロ負けしちまったじゃん!」

「何だよ、俺のせいにすんなって」


何事も無かったかのように、クラスメイトの前で笑顔を見せている有貴。


有貴が…わかんない。