「何でさ、ここに流羽くんがいるの?“友達”だったらさ、こんな場面にまで普通、巻き込む?」


お兄さんに微笑まれ、俺は只々愛想笑いを浮かべるしかなかった。

これじゃあ空気の読めない只の阿呆だ。


「……恋人でも、無い限りね。はは、そしたら俺は思いっきり悪役だな」

「…………」

「あれ、何にも言わないんだ。知ってる?無言は肯定を表すって」


有貴は眉を寄せて、黙って俯くだけ。

同じように、有貴の隣で黙っていることしか出来ない自分がもどかしい。


意を決して、俺が口を開こうとした時。

お兄さんがテーブルに身を乗り出した。


何故か俺の方へと伸びる腕。

その腕が俺の後頭部へ回され、近付いてゆくお兄さんの顔。


唇に触れているものがお兄さんのそれだと気が付くまで、そう時間は掛からなかった。