有貴と出会った中学の入学式の時から既に、有貴は１人、心の中で葛藤を繰り返していて。
聞かされた過去は、想像以上に心に重くのし掛かった。
「……流羽、泣いてる？」
「……えっ？」
目を擦ってみると、指先が濡れた。
あれ、何で涙が出てるんだろ……
「……泣かないで」
有貴の手が頭にぽんっと乗せられて、目頭が益々熱くなるのを感じた。
そうか。
俺、自分の無力さに悔しくなって、どうしようも出来なくなって。
その気持ちが、涙になって溢れ出したんだ。
「なんかね俺、変なんだ。兄貴を見るとすごく辛くなるし、泣きたくなるんだけど、涙が出ない。兄貴のことでは、一度も泣けなかった。何でだろうね。それぐらい、俺の心が空っぽで乾き切ってるからなのかな」
有貴はそう言って虚しく笑うと、頭を撫でたまま、俺の肩に顔を埋めた。
