「有貴のグローブが俺のお古だって聞いた時、もしかしたら新品のグローブ使ったこと無いんじゃないかって思って…」


嬉しかった。

まさかプレゼントが貰えるなんて思いもしなかったから。


俺はグローブを手に持ったまま、顔を上げることが出来なかった。


「ありがと…っ、智兄……」


無意識に涙が頬を伝い、床に零れ落ちる。

泣きたくなんかないのに、涙は溢れるばかりで止まらない。


「俺…っ、すごく、嬉し…い…っ」


涙で視界が揺らいでいて、俺は気付かなかった。


智兄の目の色が、変わっていたことに。


「……これ以上泣くな」


智兄の腕の中に、俺の身体がすとんと収まる。


「だって、涙……勝手に出てくるんだも……っ」

「有貴の泣き顔見たら俺、もう我慢出来ねぇよ……」


初めて耳にする低くて甘い声に、溺れてしまいそうで。

瞼にそっとキスが落とされたと思ったら、今度は唇を奪われた。