誕生日の夜。


家族皆で食卓を囲み、談笑する。

いつも仕事で忙しい父と、たくさん話せたのが嬉しかった。

学校のこと。

野球のこと。

どの話も笑顔で相槌を打ちながら聞いてくれた。


勿論、お待ちかねのケーキも、しっかりと堪能した。

普段の日に食べるケーキも美味しいけれど、特別な日のケーキの味は、やっぱり違う。

それが自分の誕生日だと尚更で、特に美味しく感じられた。

至福とは、このことをいうのだろう。


1日の疲れをお風呂で癒して自室へ戻ると、部屋の真ん中には何故か智兄の姿。


「智兄、どうしたの?」


床に座っている智兄の正面に腰を下ろした。


「有貴!」

「何?」

「……誕生日おめでとうっ」


智兄から2度目のその言葉と共に、紙袋を手渡された。


紙袋の右上には赤いリボンが“HappyBirthday”とプリントされたシールで留められている。


「これって……」

「誕生日プレゼント!喜んでもらえるかはわかんないけど、とりあえず開けてみて」

「…うん」


袋が破れてしまわないよう、ゆっくりと丁寧に開けていく。

中から姿を現したのは、真新しい新品のグローブだった。