誕生日の朝は、早かった。
母に体を揺さぶられ、ゆっくりと重たい瞼を開く。
「誕生日おめでとう。朝ご飯出来てるからね」
「ん、わかった…母さんありがとう…」
眠たい声で返事をすると、母は笑顔を見せて部屋を後にした。
11歳の誕生日の今日は、予定がぎゅうぎゅうに詰まっている。
朝8時に、いつも練習をしているグラウンドに集合。
お昼までみっちり練習をしたら、車に乗って土手へ移動。
昼食は持参した弁当を、移動の車の中で食べて済ませる。
午後2時に試合開始。
そして試合が終わったら、その場で反省会をして、終わり次第解散。
本当のお楽しみは、この後。
試合が終わって解散したその足で、智兄と一緒に予約したケーキを取りに行くのだ。
最近人気のケーキ屋さんのケーキだから、絶対美味しいに違いない。
真っ白な生クリームに、ふわふわのスポンジ。
そんなケーキに可愛らしく色を添える、真っ赤な苺。
想像するだけで、思わず顔が綻びそうになる。
ユニフォームに着替えながらこれからのことを考えていると、部屋の扉が突然開かれた。
毎度ながら、ノックも無しに扉を開く人は決まっている。