「だーかーらーっ、有貴に会いに来たんだぞ!」
「うわっ!やめて、くすぐった…っ」
一瞬ニヤりとして、智兄が俺に飛び付いて来た。
智兄お得意の、くすぐり攻撃。
「智兄…っ、やだよ!あははっ、降参!」
思う存分にくすぐられ、俺の腹筋が悲鳴を上げている。
「えー、仕方無いなぁ。そんなに言うなら止めてやる。あっ、そうだ。あれ聞いたぞ」
「…あれって?」
「有貴の誕生日、土手で練習試合なんだって?」
「うん」
「応援、行くよ」
笑い疲れて床に寝転ぶ俺の頭を、智兄は優しい表情で撫でた。
野球は大好きだけど、智兄はもっと好き。
誕生日に野球が出来て、智兄が応援しに来てくれるなんて、本当に楽しみだ。
「有貴、そのグローブちょっと見せて」
床に転がるグローブを見やる智兄。
腕を伸ばしてグローブを取り、智兄に渡した。