「なぁ、いきなりどうしたんだよ?お兄さん置いてきぼりじゃん」
「兄貴のことは、放っといても平気だから」
後ろを見れば、のんびりと廊下を歩くお兄さんの姿。
ナースさんとすれ違う度、笑顔で挨拶をしている。
「でも、折角迎えに来てくれたんだし、一緒に帰った方がいいだろ」
「俺は、流羽と一緒にいたい」
そう言って、有貴はピタリと足を止めた。
そして、俺と向き合うように身体の向きを変える。
「そう思ってくれてるのは嬉しいよ。でも、たった1人の兄弟なんだからさ…」
ふと有貴の顔を見ると、酷く怯えるような目で、俺を見つめていた。
「……この後さ、流羽の家行ってもいい?」
「別に、いいけど…」
そんな目で見られて、断れる訳が無かった。