「有貴、迎えに来たよ」


ひらひらと右手を振って現れた人物。

それは、有貴のお兄さんだった。

改めて見ると、やっぱり有貴にそっくりで、お兄さんもまた、カッコいい。


「迎えなんか…いらない」

「そう言わないでよ。日曜日にまた来るって言ったろ?」


そっぽを向ける有貴に構わず、にこにことしているお兄さん。

見る限り、有貴はお兄さんが苦手みたいだ。

明るくて優しそうな人なんだけどな。


「うーん、なんか僕は用済みって感じだね。そろそろ診察に戻りますか」


じゃあね、と挨拶を残して先生は病室から去って行く。


「先生っ、待って下さい」

「どうかした?」


振り返り、有貴の顔を覗き込む先生。


「…ありがとう、ございました」

「どういたしまして。リハビリの時は、なるべく僕も顔出すようにするから。また会おうね」


目を細めて、くしゃりと有貴の頭を撫でると、廊下へ消えていった。