そして、遂に迎えた有貴の退院の日。

めでたい筈なのに、少し寂しい。


「有貴っ、退院しても俺達に会いに来てくれよ!」

「うん、リハビリの時はここにも顔を出すよ」

「俺達、友達…だぞ!」

「ははっ、そうだな」


1週間という、短くも長い時間を共に過ごした仲間達と、抱擁を交わす有貴。

その微笑ましい光景に、なんだか妬けてしまう。


「有貴くん、退院おめでとう」

「村山先生っ」


病室に、白衣姿の凛々しい医者が現れた。


この人が、有貴が紳士だと言っていた、村山先生か。

優男って言葉が合いそうな人だ。


「もう退院だなんて寂しいな。605トリオは、これを機に大人しくなることを祈るよ」


一瞬寂しそうな表情をしたと思ったら、少年のような顔で奴等をからかう先生。


「605トリオって何ですか!」

「院内ではその名で知られているんだけど…?」


落ち着いた感じの人かと思ったら、案外子供っぽい一面も持っているようだ。

そんな騒々しい病室に、更に訪問者がやって来た。