「冗談は寄せよ、有貴。村山先生は、流羽と違って頑固ジジィじゃねぇぞ」


ドッと笑いが起こる。


……こいつら、言ってくれるじゃねぇか。


「誰が頑固ジジィだ…帰るぞ!翔、柚里!」

「帰りたくない!病院に泊まる!」

「えっ、流羽くん待って!あの…皆さん、さよならっ」


駄々をこねる翔にせがまれながら、俺達は病室を出た。

後ろで


「亭主関白!」

「流羽のオヤジー!」


なんて言う野次が聞こえてきたけど、そんなの無視。

あの3人組の相手をしていたら夜が明けてしまう。


けど、あいつら根は良いヤツだし。

有貴の入院生活も、あいつらがいれば退屈しないよな、きっと。


しかし途中、有貴の様子が少し変だったのが気掛かりだ。

お兄さんに似てると言われて、なんだか複雑そうな顔をしていた。

翔は俺に似ていると言われて喜んでいたけれど、他の兄弟からしてみれば、うちは特殊なのか?

有貴みたいな反応が、当たり前なのかもしれない。


けれど、あの表情とはっきりとしない返事には、引っ掛かるものがある。

俺の考え過ぎなのかもしれないけど…


…くそっ、村山先生って誰なんだよ!?