「着いたぞ、605号室。4人部屋かぁ…」
壁に、名札が4つ嵌められている。
扉に手を掛けて、開こうとすると、中から出てきた男の人とぶつかってしまった。
「わぁ、ごめんなさい。大丈夫?」
「こっちこそ、ちゃんと前を見てなくて、すみません…」
「本当、ごめんね!」
彼は申し訳なさそうに両手を合わせて去って行った。
今の人、誰かに似ているような…
「有貴ー!今、会いに来たぞー!」
しんと静まり返る病室。
有貴以外の3人は、各々のベッドから俺達を凝視している。
「兄ちゃんっ、僕まで恥ずかしいでしょ!」
「うん、ごめん。実は俺も今ミスったなって思った…」
向かって右の奥。
仕切りで閉ざされた向こうに、有貴がいるのだろう。
「有貴?開けるぞー」
仕切りを横へ滑らせる。
「……あれ、なんか3人も来てくれたみたいで」
起こされたベッドに身体を預け、驚いた表情で俺達を見る有貴。
それはすぐに笑顔に変わったけれど、有貴の頬がいつもより数段、紅潮していた気がする。
肌が白い分、赤くなると目立つのだ。
もしかして、熱でもあるのかな?
「有貴さ、熱とか無いよな?」
「いや、身体は痛いけど、すこぶる元気だよ」
「そっか、ならいいや」
念のため、確認を取る。
元気なら良かった。