だとしたら、小さな相手とはいえ見付かってはいけない。
大人に告げ口でもされたら敵わない。
(見つかる前に逃げよう…)
少年は、この場を離れようとしない少女に今日のところはこの場を譲ろうと後退りを始めた。
しかし…
…ガサ…
注意を払っていたにも関わらず、着ていた白いローブの裾が茂みに引っ掛かり微かに音が漏れた。
「…!誰かいるの?」
「……!!」
少年は冷や汗をかきながら、茂みから少女に目を配る。
何処まで耳が良いのだろう。
覗いた目は、しっかりと少女と合っていた。
「…ごめんなさい、勝手に入って!あまりにこの樹が綺麗だったから!この学園の人よね?」
少女の焦る言葉に少年は驚き、同時に少しばかりの安堵をする。
『自分と同じ侵入者』である事に緊張が和らぎ、小さな溜め息が漏れた。
「……?この学園の人でしょう?私がここに忍び込んだ事、秘密にしてくださらない?」
(…『くださらない』?)
その少女は幼いながらも丁寧な言葉を話した。
自分とは異なる、裕福な育ち方をしているのだろうと眉をしかめた。
「…子供?ねぇ、出てきて?お顔を見せてよ。お友達になりましょうよ。」