「んだよ!これっ!!」
化粧台に座っていたアタシに向かって
怒鳴り声をあげる汰壱。
「えっ?何?」
「今日は米の気分だ!作り直せよ!」
「あ…うん。ごめんなさい……」
こんな事も当たり前。
朝食に当たりハズレがあるなんて
聞いたことがない。
自分でも素直に従っている事に
びっくりだ。
「出来たよ。ごめんね」
アタシは急いでご飯と味噌汁を用意した。
「要らない。支度する時間がなくなった。」
こんな事も当たり前…。
「あ、うん…。ごめんね……」
此処………
アタシのウチだよね?
なんでアタシ、家政婦みたいに
なってんだろ……?
普通ならこう思う事も
"スキ"と言う感情に揉み消されていた。
"恋は盲目"なんて言葉がぴったりだろう…。
でも、売女のアタシに
寄ってくる男なんて
もう居ない。
汰壱しか………
汰壱しか居ないんだ。